こんにちは。阿部です。
パーソナルトレーニングのお客様から、こんな質問をいただきました。
「テレビで『プロテインはコレステロールが溜まりやすい』と言ってました。私はコレステロールが高いので心配です」
この方は50代の女性で、数年前にLDLコレステロール値が急激に上昇しました。(80→190に)
- それ以来コレステロールを下げる薬を服用
- 食事ではなるべくコレステロールを取らないようにしている
とのことでした。
コレステロールと聞くと、「なんか怖いもの」とか「病気になりそう」というイメージを持たれるかも知れません。
不安はあるけれど、お医者さんに根掘り葉掘り聞くのは気が引けるし、「そもそも何を聞いたら良いか分からない」ですよね。
人は分からないものに恐怖を覚えます。
コレステロールについて正しく知っていただいて、少しでも安心していただければ幸いです。
目次
- コレステロールの主な5つの役割
- 食事でコレステロールは上がらない
- コレステロール値が急激に上昇する理由
- 動脈硬化の原因は、血管の炎症
- コレステロールの影響に男女差。女性はあまり気にしなくて大丈夫?
- コレステロールを下げる薬は安全なのか?
- プロテインを飲むとコレステロールが下がる
- コレステロールの多い食品とどう向き合うのか?
- コレステロールが上がっても怖がらなくていい
【目次】
コレステロールの主な5つの役割
- 細胞膜の材料
- 脳や神経の材料
- ホルモンの合成
- ビタミンDの合成
- 胆汁酸の合成
全て私たちが生きるうえで必要なものばかりです。
コレステロールについてよくわかっていなかった時代は、コレステロールは血管に詰まるという部分だけがクローズアップされていました。
でも今では、コレステロールは必要なものというのが常識になってるんですよ。
食事でコレステロールは上がらない
昔は、『食事によってコレステロールが上がる』考えられていました。
1913年、ロシア人の研究者アニチコフの研究、「ウサギにコレステロール豊富な食事を与えると、動脈壁に脂肪がついた」に由来するようです。
ウサギは草食動物なので、本来コレステロールを口にすることはほぼないので、非常におかしな話ですよね。
人間の場合、コレステロールを含む食事、例えば「卵」をいくら食べてもコレステロール値は上がらないのです。
このことが分かってから、日本やアメリカでは2015年に食品摂取基準からコレステロールの上限値が撤廃されました。
実は、体内で使うコレステロールの7~8割は、肝臓で作られているんです。
食事のコレステロールが多ければ肝臓で作る量を減り、食事のコレステロールが少なければ肝臓で多く作られます。
コレステロール値は肝臓で調整しているんです。
ですので、ベジタリアンでもコレステロール不足にはならないし、動脈硬化だって起こります。(ベジタリアンの方が脳卒中になりやすいという報告もあります)
コレステロール値が急激に上昇する理由
コレステロールには、
- LDLコレステロール
- HDLコレステロール
があります。
LDLは、肝臓から全身にコレステロールを運ぶ役割。
HDLは、血管壁にたまったコレステロールを回収して肝臓に戻す役割です。
役割が違うだけで、コレステロール自体は同じものです。
女性は40代後半~50代頃に、LDLコレステロール値が急増する時期があります。
女性は、50歳頃にLDLコレステロール値が上昇しています。
このグラフは、コレステロールを下げる薬を飲んでいる人も含まれるため、実際にはもう少し高くなるかも知れません。
LDLコレステロール上昇の原因は、『女性ホルモンの減少』です。
コレステロールは肝臓で管理されています。
LDLコレステロールが多すぎる場合、余分なものは肝臓で回収されるんです。
しかし、女性ホルモンが減少すると、肝臓でLDLコレステロールを回収するための受容体(レセプター)が減少します。
そのために余分なLDLコレステロールを回収できなくなります。
回収したLDLコレステロールが少ない場合、「LDLコレステロールが足りない」と勘違いを起こして、肝臓はLDLコレステロールをたくさん作ってしまいます。
一覧にすると、
- 女性ホルモンが減少する
- 肝臓のLDLコレステロール受容体が減少する
- 余分なLDLが回収されない
- 回収量が少ないと「LDLコレステロールが足りない」と勘違いをおこして、肝臓がLDLコレステロールをたくさん作ってしまう
これが女性のLDLコレステロール上昇の理由です。
食事が原因ではないんです。
動脈硬化の原因は、血管の炎症
LDLコレステロールは、血管壁にこびりついて動脈硬化などの症状を起こすことから『悪玉』と言われます。
しかし、LDLコレステロールがそのまま血管壁にこびりつくわけではありません。
動脈硬化の原因の一つは、血管の炎症です。
血管に炎症が起こると、そこにLDLが入り込み、活性酸素の影響によって『酸化LDL』になります。
これは元々のLDLの働きを失った「異物」ですので、免疫細胞のマクロファージに取り込まれます。
そして、大量のLDLを取り込んだマクロファージが死ぬと、血管にアテロームプラークとなってこびりついて、動脈硬化などの症状を引き起こします。
LDLコレステロール値が高いだけで病気になるわけではないのです。
コレステロールの影響に男女差。女性はあまり気にしなくて大丈夫?
コレステロール値が高くなると、病気になりやすい?
これは男女で差があるんです。
まずは、男性の場合。(グラフ右にいくほどコレステロールが高いです。LDLではなく、総コレステロール値になります)
男性は、総コレステロール値が高いほど、脳梗塞のリスクが上がってしまいます。
では、女性はどうでしょうか?
男性とは違う結果が出ています。
男性と違って、「コレステロール値が高くても脳梗塞になりやすいわけではない」と言えます。
グラフを注意深く見ると、200〜219のところが発症リスクが最も低くなっていますね。
コレステロールは体にとって必要なものだから、適正な量が大事ということです。
血液検査でコレステロールが高いと診断されて、お医者さんから薬を処方されている場合には、下げすぎに注意したほうが良いかも知れません。
コレステロールを下げる薬は安全なのか?
コレステロールを下げる薬といえば「スタチン」があります。
「○○スタチン」という名前の薬です。
肝臓でのコレステロール合成を阻害することにより、LDLコレステロール値を抑えて、循環器系の疾患を予防する薬です。
副作用は、
- 横紋筋融解症・・・筋肉痛に似た症状や血尿など
- 肝機能障害
があります。
頻度は稀のようですが、体調に異変があればすぐにお医者さんに相談してくださいね。
プロテインを飲むとコレステロールが下がる
最初の質問に戻ります。
「テレビで『プロテインはコレステロールが溜まりやすい』と言ってました。私はコレステロールが高いので心配です」
ここまで読んでいただければ、
「プロテインはコレステロールが溜まりやすい」が嘘であることは、もうお分かりですよね。
むしろ、プロテインを飲むとコレステロールは下がります。
なぜなら、タンパク質にはコレステロールの合成を抑える働きがあるから。
こんな研究があります。
筑波大学の研究で、肥満傾向の中年女性46名を4つのグループに分けて、3か月のダイエットと、LDLコレステロールの調査をしました。
(LDLコレステロールは「悪玉コレステロール」とも呼ばれています)
- 食事制限のみのグループ・・・LDLに変化なし
- 食事制限+ホエイプロテイン摂取のグループ・・・LDLー7
- 食事制限+ウォーキングのグループ・・・LDLー9
- 食事制限+ホエイプロテイン+ウォーキングのグループ・・・LDL−13
ホエイとは乳清(牛乳の成分)のこと。一般的なプロテインです。
「プロテインはコレステロールが溜まりやすい」なんて、どこから出てきたのでしょうか??
テレビであんまりいい加減なこと言わないで欲しいですね。
と言うわけで、心配せずにプロテインを飲んでもらって大丈夫です。
コレステロールの多い食品とどう向き合うのか?
コレステロールを多く含む食品といえば、卵です。
卵1個(50~60g)には200~260mgのコレステロールが含まれています。
他には、イカやエビ、レバーなどもコレステロール高めです。
100g当たりのコレステロール含有量が多い食品
- イカ・・・270mg
- エビ・・・240mg
- 子持ちシシャモ・・・230mg
- たらこ・・・350mg
- フォアグラ・・・480mg
食品に含まれるコレステロールはすべてが吸収されるわけではなく、食物繊維の影響などで、吸収率は50%ほどになります。
それに、肝臓は1日に800mgほどのコレステロールを合成しています。
食品のコレステロールを減らしても、結局は肝臓で作るので意味はないんです。
それよりも、食事において気を付けるべきことが2つあります。
- タンパク質をとる
- ポリフェノールなどの色素をとる
タンパク質には、肝臓でのコレステロール合成を抑える働きがあります。
タンパク質を多くとっている人の方が、LDLコレステロール値は低いという結果が出ています。
ポリフェノールなどの植物の色素は、抗酸化物質として働いてくれます。
動脈硬化の原因の一つが、LDLコレステロールの酸化です。
野菜や果物に含まれる色素には抗酸化作用があるため、動脈硬化の予防になるのです。
コレステロールが上がっても怖がらなくていい
もしコレステロールが急に上がっても、それは女性なら自然なことです。
コレステロールと循環器疾患との関係が薄いのも女性の特徴です。
あまりに高すぎる場合は、薬で下げる方法もあります。
そして、普段の食生活もめちゃくちゃ大事です。
- 食品ではコレステロールは上がらない
- タンパク質をとる
- 野菜を食べる
コレステロール値の安定と、血管の健康のためにも、これらを意識して食事を考えてみてくださいね。